「最近なんだか疲れが取れない」「気分が落ち込みやすい」「急なほてりに悩むことがある」…そんなお悩みを抱えていませんか?もしかしたら、古くから伝わる知恵、「漢方」があなたの味方になってくれるかもしれません。
漢方と聞くと、少し難しく感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は私たちの身近な不調にも寄り添ってくれる、とても優しい医学です。
今回は、薬剤師国家資格を持ち、海外や病院と広告代理店での勤務経験もある薬剤師の草野和加さんに、漢方の基本的な考え方から、皆さんの不調をサポートしてくれる可能性について解説いただきます。
漢方って、西洋医学とどう違うの?
草野さん:漢方というと、皆さんはどんなイメージをお持ちでしょうか?もしかしたら、西洋医学とは全く違うもの、と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
漢方を植物に例えると、「根を治す医学」と言えます。西洋医学が、痛みのある「枝や葉」を取り除いて素早く治すことに対し、漢方は弱っている「根」に栄養を与え、根本から整えていくイメージです。

漢方薬の材料は、皆さんが想像するような植物が約8割を占めますが、中には鉱物や動物由来の生薬も使われることがあります。時間をかけて優しく治療するというイメージを持たれがちですが、実際には、その方の状態や症状によって、早く効果が出ることもあります。西洋医学のような強い副作用が少なく、体質に合ったものを服用できれば、副作用が起こることは非常に稀です。
「気・血・水」って何のこと?漢方で考える体のバランス
草野さん:漢方では、私たちの体を構成する基本的な要素として、「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つが大切だと考えられています。
血(けつ): 体の中を流れる赤い液体、つまり血液のことです。体に栄養を運び、潤いを保つ役割があります。
水(すい): 血液以外の、体の中を流れる様々な液体を指します。リンパ液や唾液、汗などは、体の潤滑油のようなものです。
この「気・血・水」のどれかが不足したり、流れが滞ったりしてバランスが崩れると、体に様々な不調が現れると考えられています。
例えば、乾燥肌は「肌の血虚(陰虚)」と呼ばれる、血や潤いが不足している状態の場合が多く、それを改善する漢方を服用することで、肌の潤いなどの改善が期待できることもあります。
漢方はどんな時に試すのがいいの?
草野さん:西洋薬が体に合わない(副作用など)、西洋医学的な治療ではなかなか改善しない場合などは、漢方で良い方向に向かうことがよくあります。また、ホリスティック*な視点でのアプローチがしたい場合などにもおすすめです。
漢方は、全ての年齢の方に適していると考えられています。小さなお子さんでも服用できる漢方も多いんですよ。服用するタイミングは、食前や食間が一般的ですが、ご自身の都合に合わせて食後でも問題ありません。何よりも、継続して服用することが大切です。
漢方を始める前に、ここだけは知っておきたい!
草野さん:市販の漢方薬もたくさんありますが、ご自身の体質に合っていないものを選ぶと、かえって不調を引き起こす可能性もあります。例えば、冷え性なのに体を冷やす作用のある漢方を飲んでしまうと、症状が悪化することもあり得ます。
ご自身の体質や、その時の体調に本当に合った漢方を見つけるためには、漢方の専門家に相談することが最もおすすめです。専門家は、皆さんの体の状態を詳しくお伺いし、「気・血・水」のバランスや、その時々の体質を見極めて、最適な漢方を選んでくれます。
もし、漢方を服用してみて、かえって不調を感じたり、3〜4週間ほど服用しても改善が見られない場合は、その漢方が合っていない可能性も考えられますので、専門家にもう一度相談してみてくださいね。
あなたの「気・血・水」バランスは?簡単セルフチェック!
草野さん:漢方では、私たちの心と体を構成する大切な要素として「気(エネルギー)」「血(血液)」「水(体液)」の3つがバランス良く巡っていることが重要だと考えます。あなたの今の状態をチェックして、ご自身の「気・血・水」のバランスのヒントを見つけてみましょう。
【チェックのヒント】
チェックが多くついた項目は、その「気・血・水」の要素のバランスが乱れている可能性があります。
①「気のバランス」にチェックが多い方は、エネルギーが不足している「気虚(ききょ)」や、気の巡りが滞っている「気滞(きたい)」の傾向があるかもしれません。
②「血のバランス」にチェックが多い方は、血液が不足している「血虚(けっきょ)」や、血の巡りが滞っている「瘀血(おけつ)」の傾向があるかもしれません。
③「水のバランス」にチェックが多い方は、体内の水分の巡りが滞っている「水滞(すいたい)」の傾向があるかもしれません。
※あくまで簡易的なセルフチェックです。ご自身の体質や状態を詳しく知りたい場合は、漢方の専門家にご相談いただくことをおすすめします。
いかがでしたか?
体調の変化は、誰にでも起こりうる自然なことです。しかし、その変化にどう向き合うかで、日々の過ごし方は大きく変わってきます。
「なんとなく不調が続く」「もっと自分らしく、快適に過ごしたい」そう感じたら、漢方をあなたの心と体に寄り添い、健やかさを取り戻すための選択肢として考えてみるのも良いかもしれません。
次回のコラムもお楽しみに。
*漢方薬は医薬品です。服用に際しては、漢方専門の医師や薬剤師にご相談ください。
全体的な、包括的な、という意味。漢方では、体の特定の症状だけでなく、心身全体のバランスを整えることを重視します。
\今回お話を伺ったのは/